課長に線引きされてしまった。


大事な部下。課長は冴子さんのためなら『好きでもない相手』や『大事な部下』とでも結婚できるんだ。



チラっと課長の席に目をやる。怒鳴ることも仕事の一環だと言った課長。



その姿は信号の真ん中で立ち止まって慌てふためいたり、デザートコーナーで幸せそうに選ぶ可愛らしいイメージはない。



寡黙でノンフレームの眼鏡の下はきりりと凛々しい瞳。仕事のことしか頭に無い私がずっと見てきた鬼上司の顔。



もうあの顔じゃ満足できない。
私が見たいのはあの表情じゃない。

でも、きっちり線引きされてしまった以上どう近づいていいのかわからない。



通勤時間を合わせようとこっそり部屋から覗いてみるもいざ勇気がでなくてそっと気づかないふりをしてカーテンを閉める。



課長は私よりもずっとはやく出勤する。だから私はこっそり課長を見送ってから家を後にする。



お父さんは朝、勝手に出て行くから気にしないけれど最近は冴子さんが朝、窓から送り出しているのを知ってる。



また、その姿に胸が痛くなる。お父さんと冴子さんの幸せには再婚を認めてあげることだとわかっているけれど私はまだもがいてる。



足掻いてる。本当に子どもだと思う。