吐き出す愛



 ……どういう意味?

 頼りないのに響くように訴えてくるようなその声に、ついそう尋ねてしまいそうになった。

 だけど私が口を開くのを待たずに、有川くんが諦めた様子で腕から手を放す。
 掴まれていたときの強すぎる痛みからせっかく解放されたのに、私の心は残った手の感触と温もりに支配されたままだった。

 そして瞳は、目の前の彼から逸らせない。
 いつもの目立った姿とは違う、ちっぽけなその存在から。


「……もう、いいよ。これからはもう、佳乃ちゃんには関わらないから」

「有川くん……」

「今まで迷惑かけてごめんな」


 ほぼ投げやりな声で、言い聞かせるようにそう言う。

 そして有川くんは私の顔を見ることなく横を通り過ぎ、この場から先に立ち去っていった。

 おかげでさっきよりもさらに冷たい空気で満たされた空間に、私は1人で取り残される羽目になる。

 すぐに動くことも出来ずに呆然と立ち尽くしていると、静かに涙が一滴だけ落ちた。


「……っ、どうして……」


 力が抜けきった膝が崩れ、その場にしゃがみこむ。
 膝に顔を伏せると、スカートの上に丸い染みがいくつも出来た。


 ……どうして、胸が張り裂けそうなのだろう。

 有川くんの表情と言葉が、頭から離れない。

 それがとても苦しい。今までで一番の苦しさに心が痛む。

 私はただ、有川くんの気持ちが信じきれなくて。
 だから、告白を断りたかっただけなのに……。

 傷付いたように私を見つめてきたあの表情に、とても罪悪感を感じている。

 ……最低だ。
 私はきっと、有川くんを傷付けてしまった。

 有川くんにあんな表情をさせてしまったのは、私だ。