「……もう、私には関わらないで」
「はあ? いきなり何言ってんだよ。何でそんな話になるんだ?」
「ずっと、言おうと思ってたの! 有川くんと一緒に居ると、噂されたり変に注目されるから嫌なの。もう、こんなのこりごりなんだから!」
本音と嘘が混ざった思いを吐き出す。
風がざわざわと吹き荒れて、辺りに不穏な空気を作り出していた。
呆然とした様子だった有川くんも、徐々に言葉の意味を理解したらしい。
眉間を寄せて目を細め、険しい顔つきに変わっていく。
「……それってつまり、告白も断るってこと?」
その声がか弱く震えているみたいで一瞬返事を躊躇うけど、小さくうん、と頷いた。
……本当は、こんなにもはっきりと断るつもりじゃなかったんだよ。
自習のときに密かに決意したように、曖昧なままの気持ちを伝えるつもりだった。そしてもう少しだけ考える時間を貰えるように、有川くんに頼むつもりだった。
だけど……あの瞬間に、彷徨っていた気持ちは一方に傾いてしまったの。
あのキスシーンを見たときに嫌悪感の存在が再び大きくなって、それが完全になった。
あんな姿を見ては、もう。
有川くんのことは、信じられない。
有川くんを直視出来ずに俯く。
するとその途端に強く腕を掴まれ、痛さのあまり嫌でも有川くんと目を合わす羽目になった。
「何で……! 何でそんな、いきなりそうなるんだよ!? この前までは、全然そんな素振り見せなかったじゃねーか!」
「……」
「俺のこと、信じるようになってくれるんじゃなかったのかよ!?」
「何を信じろって言うのよ……!!」
一方的だった有川くんの大声に自分のものを重ねた。
こんなの売り言葉に買い言葉で、子供じみた喧嘩だって分かっている。
それでも、心の中からふつふつと湧き上がる思いを抑えきれなかった。



