「なあ、顔色悪いのも俺のせいか? 俺が何かしたんなら、それならそれではっきり言ってくれよ」
黙って俯いていると、心配そうに顔を覗き込まれた。
本気で気にしているような表情からは優しさが滲み出ていて、何も言えない自分が嫌になる。
……自分でも、どうしてこれほどまでに引きずっているのか分からないんだよ。
有川くんのせいだと言えば、確かにそうなのかもしれない。
だけど、こんなの私が勝手に気にしてしまっているだけで。
私には、有川くんの行動を責める権利がない気がするんだよ。
唇をきつく閉じて気持ちをもやもやと渦巻かせていると、有川くんは屈んで私に目線を合わせてきた。
「佳乃ちゃん。嫌なこととか不満があるなら正直に話してよ。何でも受け入れるからさ。俺は佳乃ちゃんが好きだから、ちゃんと向き合って話したいんだよ」
そう言って、有川くんは私の頭を撫でようと腕を伸ばしてくる。
その瞬間脳裏に、女の子の頭を撫でて引き寄せていた有川くんの姿がくっきりと浮かんできて……。
「……いやっ!!」
――パシッ!
響いた乾いた音、手の甲に残る摩擦の痛み。
気が付くと、自分でも信じられない早さで、触れてくる直前だった有川くんの手を払い除けていた。
「佳乃ちゃん……?」
「……っ、……」
私に届かなかった手のひらを見つめ、それから怪訝な顔をして有川くんが見つめてくる。
それに一瞬怯むものの、どうやらさっき有川くんを拒んだ瞬間に、私の中でスイッチが入ったみたいで。
私の口は、冷たく言葉を吐き捨てる。



