「ほらほら~。今の心境はどうなのよ? そろそろ智也の気持ちは信じられるようになったんじゃないのー?」
優子はペンケースをマイクにたとえて私の前に差し出していて、まるでインタビューをしている記者みたいになっている。
ここで黙秘が出来るならそうしたいわけだけど、彼女はそうさせてくれるほど甘くない。
迫ってくるピンクの蛍光色のペンケースにたじろぎながら、ここには居ないあの人をひっそりと恨んだ。
有川くんの馬鹿野郎……。
有川くんさえ何も言わずにいてくれたら、私は毎回優子の質問に困らずに済むのに!
私から優子に、有川くんとの出来事を逐一報告する手間が省けるのはありがたい。ただあまりにも事細かく話されるのは、ちょっといただけなかった。
2人の間で生まれる記憶。
それが漏れていくのが、何だか寂しい気もするし……。
「ほらー、早くすべてを吐き出しちゃった方が楽になるよー?」
「吐き出すって……」
私に回答を急かす姿はもはや、記者というより刑事に近い。ドラマなどに出てくる強面の刑事さんに比べたら、十分耐えられるけど。
何だかなあ……。
絶対優子と有川くんって、裏で手を組んでいると思う。有川くんの望むような返事を、私にさせるために。
だってもともと優子は、私と有川くんを近付けようとしていたぐらいだ。それぐらい協力していたっておかしくはない。
……まあ、以前それを疑って聞いたときも、それ以降に何度聞いてみても、そんなわけないとはぐらかされているんだけどね。
一向に引いてくれる気配がない優子に観念して、もぞもぞと口を動かした。



