吐き出す愛



「……で、ぶっちゃけどうなのよ?」


 私の隣の不在人物の席に我が物顔で座るなり、優子は教材を準備する前に口を動かした。
 その姿にぱちくりと瞬きをする。

 優子のことだから、勉強よりもおしゃべりを優先するだろうと思っていた。
 でも私が教材を机の引き出しから出す前にという、予想を越える早さでおしゃべりモードに入るものだから、驚かずにはいられない。

 キリリとした瞳でこちらを見つめ、まるで逃がさないと言うような視線。それを見て、何か変なスイッチが入っちゃったなあって思った。

 逃げる策さえ塞がれてしまったから、首を傾げて惚ける。


「……何の、話かな」

「智也のことに決まってるでしょ。一緒に勉強したってネタは、とっくに把握してるんだからね」


 すべてお見通しです、と言わんばかりの優子の笑顔が可愛すぎて憎い。

 ……ああ、またか。

 ありがたいような迷惑なような。そんな感情で胸が膨らみ、溜め息を飲み込んでそう心の中で呟いた。


 優子が私と有川くんの間で起きた出来事を把握しているのは、今回だけじゃない。
 初めてデートをした日からずっと、2人のやりとりを知っている。

 ……有川くんが、優子に話すせいで。


 何でも有川くんは、私と関われるようになったことが相当楽しいというか嬉しいみたいで。
 それを自慢するかのように、毎回幼馴染みの優子に話し込んでいるらしい。

 だからおかげで、私と有川くんに関する情報はすべて優子に筒抜け状態。
 有川くんが私に告白してきたことも、その返事が保留のままなことも、もちろん知っている。

 だからこそ近況を知り尽くした優子は、毎度のごとく私の気持ちを確かめてくるんだ。

 あれほど嫌っていた有川くんのことを、本気で受け入れるようになったのか。もう返事は決めたのか……って。