吐き出す愛



「……そういうのって、いつか自分で気付くものだと思う。“好き”って気持ちを何回も経験していくうちに、愛の存在が分かるようになるよ。……きっと」


 私はまだ、誰かを“好き”って思うことさえままならない状態だけど、そんなふうに思ったんだ。

 愛を知ろうとしていれば。“好き”って誰かを思う気持ちを知っていれば。

 誰も説明してくれない愛の意味を、いつかは自分で知る日が来るって、私はそう信じてる。

 まだ、15歳だ。
 愛なんていう盛大な感情は、分かっているようで分かりきれないまま。

 だからこそ、“好き”って気持ちを抱いて、人は恋をしていくのだと思う。

 いつか本当の愛を知り、“愛してる”と思える大切な人の側に居られるようになるために。

 愛を知った、そんな大人になれるように、少しずつ――。


 真っ直ぐ見つめる私の瞳を、有川くんはちょっと意外そうに見ていた。
 でもそれから、安心したように笑みを浮かべる。

 だけど次に口を開くときにはもう、いつもの有川くんの顔に戻っていた。ちょっぴり意地悪な顔。


「……ふっ、恋愛したことないのによく言うよ」

「ひっ、ひどい! 人が真面目に言ったのに……」


 有川くんの疑問を解決出来るように、精一杯考えて言ったのに。有川くんは相変わらず私の恋愛未経験を出しにして笑った。

 もうすっかり思い詰めた様子ではないのは嬉しいけど、からかわれた私はむきになって唇を尖らせる。


「ははっ、拗ねんなって! ……つうか、ちゃんと分かってるって。佳乃ちゃんが真剣に言ってくれてることぐらい。だから……」


 ぎゅっと、ふいに。
 油断していた右手を、大きな手のひらに包まれる。

 たくましい温もりに驚きながら顔を向ければ、照れたように笑う有川くんと目が合う。