「この2つの単語は、どっちも人に対しての“好き”って意味で使えるわけだけどさ。同じ“好き”って言葉をわざわざ別の単語で表す必要がねえと思うんだよ。何か、“好き”なら“love”って単語に統一した方が分かりやすいしさ。そうしたら“like”は“~に似た”って意味だけになってより意味の区別がしやすくなるし、絶対その方が良いと思うわけだよ。……どう、この俺の考えは!?」
まるで世紀の大発見ですーって感じの輝かしい笑顔で、自信満々に言われた。
身を乗り出す勢いで熱心に説明してくれるのはありがたいんだけど、向けられた笑顔に難しい表情を返す。
あいにく、またもや有川くんの考えに同意することは出来なかった。
「うーん……。私は、それはちょっと違うと思うなあ。同じ“好き”って意味にも色々な解釈があるから、別々の単語を使うようになってるんだもん。日本語の“好き”と“愛してる”って言葉の意味が違うように、“like”と“love”に込められた意味が違うんだよ。だから、統一せずに使い分ける必要があるんだと思う」
自分で言っておきながら、ややこしいなと思った。
感情を表す言葉は難しい。それは日本語でも英語でも、同じこと。
おそらく有川くんが例に出した言葉は、感情の中でも意味を線引きするのが一番難しいと思う。
だって“好き”や“愛してる”なんて感情は、目に見える形ではない。
大きさを比べたり重さを量ることも出来なくて、何を基準に確かめたらいいのかも分からない。
どこまでが“好き”で、どこからが“愛してる”なのか。
きっと誰もがきちんと線引き出来ないって分かっているからこそ、でも確かに違う意味だって感じているからこそ、統一せずに曖昧なんだよ。
日本語も英語も、この言葉を使う人達がどちらの意味も選択出来るように。



