それなのに有川くんと一緒に無我夢中になって走ったのは、私のために必死になってくれる横顔をもっと見ていたいと思ったからだ。

 普段は見かけないその切羽詰まった表情だけは、唯一信じられる気がしたんだよ。

 今まで見てきた有川くんよりも、ずっと――。


 最初から最後まで手を繋いだまま、初めてのデートを終えた夜。

 その温もりだけは嫌いじゃなかったなって。

 息を切らしながらも楽しそうに走る有川くんを見ながら、こっそりと思っていた。