疑問が少しずつ明かされていく。それなのに、有川くんの質問の意味を理解したくないと心が叫んでいる。
……だって、こんなの、まるで。
一番あり得ない言葉を、有川くんは言おうとしているみたいじゃん。
だから頭が、質問の意味を拒否する。
これぐらい細かく説明されなくても分かるけど、それでも私が思っている答えとは違うって、そう信じていたかった。
だけど私の心の抵抗は虚しく、沈黙を“分からない”と捉えた有川くんが口を開きかけた。私は息を呑む。
「――好きだからだよ。だからずっと、気になって見てたんだ」
有川くんの声が私の中で反響した。
その瞬間。……ドキッ、って。
心臓が経験したことのない動きを、初めてしたような気がした。
心臓が跳ねる息苦しさに、嘘だと思いたいのに。
向けられた有川くんの表情に、否定の言葉を言えなくなる。
だってそれは、今まで私が遠くから見ていた有川くんのどの表情とも違っていた。
騒いでへらへら笑う表情でも、意地悪で強引な表情でも、何を考えているのか分からない表情でもない。
初めて見る有川くんだからこそ、少しだけなら信じてみたくなるんだ。
これが有川くんの、根本的な部分なのかなって……。
だけど、すぐには彼の言葉を受け入れられなかった。疑念が言葉に宿る。
「……わっ、私なんかのどこが良いの? 私には、有川くんが好きになる要素なんてない気がするけど」
騒ぎ出す鼓動に素知らぬフリをして、有川くんに問いかけた。
……分からないよ。
この前まで話したことがなかった人を、好きだなんて言える心境なんて。
ずっと見ていたなんて、そんなことだけで恋愛感情は生まれるものなの?



