「ほら、見てみろよ」
柵の手前で有川くんは足を止めると、その先を指差した。
辺りが薄暗くて表情が確認出来ないけど、声だけでも有川くんが微笑んでいるのが分かる。
それぐらい、穏やかな声だった。
言われた通りに視線を動かすと、自然と目が見開いた。ゆっくりと、感嘆の声が漏れる。
「……うわぁ、綺麗ー!」
柵の向こうの眼下に広がった景色。それはさっきまで居た商店街や住宅街が織り成す、優しい光の夜景だった。
町並みのさらに奥に広がる海からは、潮気を含んだ風が容赦なく襲いかかってくる。
でも今はそれが、全然苦に感じられない。
派手なネオンではなくて柔らかな光の集合体は、まるで光の波が寄り添っているみたいで、一瞬にして虜になっていた。
「すごいね、有川くん! こんなにも綺麗な夜景が見られるなんて、全然知らなかったよ」
「喜んでもらえたみたいで良かった。つうか、知らなくて当然だって。何しろ俺の、とっておきの場所だからな!」
だいぶ暗闇にも目が慣れてきて、有川くんが自慢気に笑ったのが見える。その輝きは、夜景と同じぐらい優しかった。
有川くんがここをとっておきだと言った理由は、十分分かる。
だってこんなにも綺麗な夜景が見られること、きっと誰も知らないよ。
寂れて人が寄り付かなくなってしまっている高台から、こんな素敵な光の光景を発見したなんて、有川くんはすごい。
「うん! 本当にとっておきの場所だね。こんな素敵な場所に連れてきてくれてありがとう!」
素直に感想を伝えると、有川くんの瞳が丸くなった。でもすぐに、嬉しそうに弧を描く。



