吐き出す愛



 風の冷たさから逃げるように、巻いていたグレーのマフラーに顔を埋める。
 すると有川くんも寒そうに首をすくめていた。


「佳乃ちゃん寒くない? 大丈夫?」

「私は大丈夫だよ」


 心配そうに声をかけてくるので、笑って答える。

 実際、本当に寒くなかった。
 風は冷たいけど、有川くんと繋いでいる手から伝わるぬくもりが、ずっと私を温めてくれている。

 だから大丈夫、だなんて。

 そんな理由は口に出来ないから、笑って誤魔化したけど……。


「……有川くんこそ、寒くないの?」


 マフラーどころか何も着けていない首もとを見て、こっちの方が心配になる。
 だけど彼はさっき寒そうにしていたにも関わらず、平気だよ、って当然のように言った。


「佳乃ちゃんの手が温かいから、これぐらいの寒さはへっちゃらだよ」

「えっ」


 あまりにも平然とそんなふうに言うものだから、一瞬表情が固まってしまった。

 有川くん、私と似たようなことを思ってたんだ……。

 そう意識すると恥ずかしいというか照れくさくなって、上手く返す言葉も見つからないまま俯いた。

 ……何だか、変なの。
 有川くんの言葉を聞いたとき、少しだけ嬉しいって思ったんだ。

 お揃いの気持ちって、くすぐったくなる。どうしてだろう。


 この高台に着くまでに、すっかり世界は宵闇に染まっていた。だから、助かった。

 だって私、きっと今、不思議な表情をしているはずだから。
 熱くなった頬も、この暗さなら色なんて分からないよね。

 繋いでいる手に、きゅっと強く、でも優しく力を込められた。


「佳乃ちゃん、こっち来て」


 高台の一番奥の、柵が立っているところまで2人で歩く。
 街灯が1本しか立っていなくて視界は朧気だけど、有川くんに手を引いて導かれるから、安心して足を進められた。