吐き出す愛



 ……だって、あんなの緊張してもしょうがないじゃない。

 有川くんってば、やけに接近して隣に並んでくるんだもん。最終的には肩まで引き寄せてくる有り様だったし……。

 あんなに呼吸や心音が分かるような距離で密着してるのに、緊張せずにはいられないよ。

 いくら嫌いな人だって、やっぱり……。


 唇を噛み締めて恥ずかしさを堪えていると、にやにやと笑みを向けられた。

 何だかこれは、嫌な予感しかしない。


「……へえ? 佳乃ちゃん、緊張してたんだ。普段強気なのにこの程度のことで緊張するなんて、ほんとうぶだよなあ。ギャップとか、すげーそそられる」


 にっこりと悪魔な微笑みを向けたまま、有川くはじわりじわりと歩み寄ってくる。

 熱を秘めた視線を真っ直ぐ浴びせてくるものだから、麻痺してしまったかのように目を逸らすことが出来ない。
 後退りすると、背後にプリクラ機があったせいですぐに追い詰められた。


「あっ、有川くん……」

「なあ、今も緊張してんの?」


 背の高い有川くんは首を傾けて顔を覗き込んでくる。

 初めて至近距離でまともに見た有川くんの顔は、顔の一つ一つのパーツがどれも整っていた。

 すっと伸びた鼻筋や緩やかに伸びる唇は綺麗で、思わず見とれてしまうほど。彼が女の子に困らない理由が、ようやく理解出来た気がする。

 伏し目になった切れ長の目が妙に色っぽくて、またあの得体の知れない感覚に陥った。本日何度目だろう。

 う、わ……。
 今絶対、顔が赤くなってるだろうな。

 きっとこれも、お決まりの彼の手口だと自分に言い聞かせる。
 だけど、はやる鼓動を落ち着かせることはどうしても出来なかった。