吐き出す愛







 有川くんのプラン通り、商店街の一角にあるゲームセンターに立ち寄った。

 ガヤガヤ、ガチャガチャ。

 様々な機械から流れるメロディーや、コインが流れる音。
 そういうのと人のざわめき、それから充満したタバコの匂いにむせ返りそうになる。


「佳乃ちゃん、なんか欲しいものとかあるー?」


 騒音に負けないような大声を出して尋ねられる。有川くんの目線は、ゲームセンターの入り口付近に並ぶUFOキャッチャーの機械を見ていた。

 透明なガラスの向こう側には、カラフルなぬいぐるみや景品が絶妙な配置で居座っている。


「別に何もないよー! それにさっきも言ったけど、お金持ってないし!」


 ガッチャンガラガラとうるさい音に負けないように喋る。耳が痛い。

 有川くんは私の声が聞き取りにくいらしく、眉を下げて顔を寄せてきた。


「えーっ!? 何て言ったー?」


 ぐいっと近付く有川くんの顔。

 ちっ、近すぎるし!

 至近距離で見る薄茶色の瞳にどぎまぎして、ぷいっと顔を横に逸らす。

 バクバクと騒ぎ出す心臓に目を背けてガラスの奥に視線を向けると、つぶらな黒い瞳と目が合った。

 あっ、と咄嗟に声が漏れた。か弱い声だったに違いないけど、有川くんはそんなものに限って聞き逃さない。


「何? 佳乃ちゃん、これが欲しいの?」


 有川くんはカエルのマスコットキーホルダーを指差した。真っ赤なハートを持っているそれは、この地方のゆるキャラだ。
 緑色や水色、ピンク色や黄色といった色鮮やかなカエルのキャラクターが、罪なき真ん丸な瞳でこっちを見つめている。


「佳乃ちゃん、こういうの好きだったんだなー。なんか意外」

「そう? 可愛いと思うんだけどなあ……」


 カエルのキャラクターを見て、そうぽつりと呟いた。
 うん、やっぱり何度見ても可愛い。