「ゲームセンターって……。制服のまま行くのはまずいんじゃないんですか?」
私もパックを近くのごみ箱に捨てるけど、有川くんと違って表情は曇る一方だ。
いつしか帰るという選択肢を忘れている自分にはたと気付いて戸惑ってしまう。
「まだこの時間なら補導されねーし大丈夫だって。だからほら、行くぞ!」
そう言うや否や、手を繋いで歩き出されてしまった。
相変わらず、指が一本一本交互に絡まった繋ぎ方。
学校を出るときから思ってたんだけど、これって恋人繋ぎっていうのかな。経験ないから、いまいちよく知らないけど。
……っていうか。
「あの、有川くん……。手って、繋いでる必要あるんですか?」
「あるに決まってんじゃん。デートなんだしさ。つうかずっと気になってたんだけど、いい加減その敬語と名字呼びはやめろって」
「えっ」
ゲームセンターに向かっていた2人の足が、自然と同時に止まっていた。
不機嫌そうに眉を下げた有川くんが私を見ている。
「この前だって言っただろう? 仲良くなりたいのに、敬語なんてよそよそしいって」
「でも……」
「でもじゃねーの! デートしてるんだから、とりあえず敬語ぐらいやめろって」
真面目な顔でそこまで言われると、圧迫感で言い返す言葉を失ってしまった。
どうしてそこまで、親しくなろうとするんだろう。
もともと有川くんと関わりたくないって思っていた私としては、これ以上親近感を持ちたくない。
でも私が敬語を取っ払わない限り、有川くんは頑固として動こうとしなかった。
譲歩することに躊躇いはあったけど、ここまでされるともうしょうがない。



