吐き出す愛



 ぞくり、と。
 味わったことのない感覚が身体の内側から滲み出て、最終的には全身に広がった。

 ……何だろう、この感じ。
 得体の知れない不思議な感覚に身体が支配されて、蝕まれていく気がする。

 知りたくもない感情が芽生えている気がして、誤魔化すように咄嗟に早口で言った。


「さっ……、さっきのお店には、今まで何人の女の子と行ったんですか?」


 ……ああ、私ってば。一体何を聞いてるんだろう。

 気になっていたこととはいえ、別に今聞かなくていいじゃない。……っていうか、聞く必要もないでしょう。

 そもそも。気になっていたって何よ、私!


 ちらりと隣を見ると、有川くんの動きが止まっていた。最後の1個をちょうど口に入れて閉じた瞬間のまま。

 でも止まっていたのはほんのわずかの時間だったようで、有川くんはもぐもぐと口を動かしながら視線を右上へやった。

 どうやら、記憶を手繰り寄せているみたい。


「……うーん、どうだろな。いちいち数えてねーから分かんねえ」


 有川くんの大きな喉仏が縦に動く。ごっくんっていうたこ焼きが飲み込まれる瀬戸際の音が、何だか聞こえてきそうだった。


「つうか、何? そんなに俺のことが気になる?」

「……聞いた私が馬鹿でした」

「おいおい、そこは気になるって言っとけ!」

「別に、気になってなんかないです」


 そう言い切ってパックの中のたこ焼きをすべて平らげる。

 だけどごちそうさまでしたと言う頭の中は落ち着かなくて、自分でもどうしてあんなことを聞いたのか、上手く説明出来る理由が見つからなかった。


「腹ごしらえも済んだし、ゲーセンでも行きますかー」


 私の返答に不服そうにしていた有川くんだけど、空になったパックを捨てながらそう言う声は明るかった。