とてもイメージとは違いすぎて、想像もつかない。有川くんなら色んな女の子と付き合い放題って感じだし、そんな人が片思いだなんて。
……いや、言ってることが本当なのかどうかも危ういけど。
だって本気で好きな人がいるのに、色んな女の子と付き合ってるなんておかしいじゃない。
「好きな人がいるんだから、俺だって一応、恋愛の楽しさは分かってるつもり。……ってことで、俺がその楽しさを教えてやるよ!」
疑心暗鬼な表情で有川くんを見るけど、有川くんはそんなことお構い無し。
繋いでいた手を引いて、校門に向かって歩き出す。好奇の視線が後ろに流れた。
「ちょっ、ちょっと……! 離してください!」
「良いじゃーん。とりあえず行こうって」
足に力を込めて、駄々をこねる子供のようにその場に留まろうとするけれど、ずるずると引きずられる。男の子の力には敵わなかった。
代わりの反抗手段として、大きな背中に精一杯叫んだ。
「あ、あの! 好きな人がいるのに、私なんかと一緒に帰っていいんですか!?」
こんなところを好きな人に見られたら、きっと余計な勘違いをされてしまうだろう。
ただでさえこの状況を目撃している人はたくさん居るのだから、明日にはどんな噂が広まっているのか分からないっていうのに。
「そんなの大丈夫だって! だからとりあえず行こう!」
根拠もないのに有川くんはそう言うと、ぐいっと私を隣に並ばせた。
ここまでされるともう、抵抗する気力もない。
……本気で好きになった人がいるなんて、きっと嘘なんだろう。
本当にそんな人がいるなら、こんな軽々しく彼女でもない女子と手を繋ぐわけないもの。
鼻歌を歌いながら、好き勝手に歩き出す有川くん。
ご機嫌な横顔に溜め息を吐いて、私は渋々彼についていった。



