吐き出す愛



 帰宅する人や部活に向かう人で混雑する昇降口付近。
 そんな場所で有川くんと一緒に居ると、周りの人の視線が痛い。

 地味系の私にひたすら構おうとする有川くんにみんなは興味津々みたいで、好奇の目線がチクチクと突き刺さってきた。

 ……だから嫌なのに。自分と違いすぎる人と関わるの。


「良いじゃん、一緒に帰るぐらい。帰る方向一緒だし、2人でどこか寄り道して帰ろう」


 周りの視線に気付いていないのかそれとも気にしていないだけなのか分からないけど、有川くんはそんなことを堂々と言ってみせた。

 しかも言っていることが自分勝手すぎる。


「さっき、嫌って言いましたよね? 私急いでるので、これで失礼します」


 そう言い残して再び隣をすり抜けようとする。
 だけど腕を掴まれてしまって、やっぱりまた止められてしまった。

 完全にあの日の二の舞だ。

 でも掴まれた腕に伝わる力は、以前と違って明らかに手加減されている。


「急いでるって、何か用事でもあんの?」

「別にないですけど、受験生なんだから勉強ぐらい家でするんです! だから早く帰らせてください!」


 答える必要なんてないと思っていても、いつもついつい本音を答えてしまう。
 自分がお人好しなのか馬鹿なのかよく分からない。

 有川くんは私の顔をじっと見て口を開いた。


「なーんだ。受験勉強か。そんなの1日ぐらいサボっちゃえば良いじゃん」

「なっ、何言ってるんですか! 受験だって近いのに、サボれるわけないです!」

「受験じゃなかったらサボって良いの?」

「そういう意味じゃない!」


 むきになる私を見て、有川くんはあははっと笑っていた。

 有川くんの笑顔は笑い声が大きくて豪快だ。笑えば笑うほど、有川くんにだけスポットライトが当たっているみたいに明るくなる。