吐き出す愛



「はい、どうぞ。俺から佳乃ちゃんへのプレゼントだから受け取って」

「……ありがとう、有川くん!」


 有川くんから紙袋を受け取る頃にはもう、変な意地なんてすっかり吹き飛んでいた。

 手の中に収まるそれに笑みが溢れるほど嬉しい。

 現金な態度を見て、有川くんが隣で笑った。それは馬鹿にしているものではなくて、やけに穏やかな笑いだった。

 至近距離で見上げた笑顔に、嫌でも胸がざわつく。


「やっぱり、佳乃ちゃんらしいなあ。そういう素直な反応するところ。あの頃と全然変わってない。変なところで意地を張るのも変わってねーけど」


 懐かしむような声色で、有川くんはそう言った。

 “あの頃”というのは、きっと私が思い出す“あの頃”と一緒なのだろう。

 そのことに気付くと、嬉しいような苦しいような自分でもよく分からない気持ちになった。


 ……ねえ、有川くん。
 あの頃のこと、どんな気持ちで思い出してるの?

 有川くんと再会してから、一緒に食事をした日。
 そのときは、あの頃のことは気にしていないと言った。

 それを聞いててっきり、別れの日だけではなくあの頃すべてのことを気にしていないのだと思っていたけど……。

 さっきの声と笑みからは、ちょっと違うように思えた。

 だって、今の私が5年前と変わってないと感じるほど、あの頃のことを覚えているのだから。

 それって、あの頃すべてのことを気にしていないわけじゃないってことだよね……?

 覚えていたのなんて、たまたまのことなのかもしれない。

 でも、あの頃の私との思い出が、有川くんの中にちゃんと残っているのが嬉しかった。

 5年の間に、私と同じようにあの頃のことを思い出すことがあったのかなって。
 一緒に過ごした時間を、特別だと感じてくれているのかなって。

 つい、期待してしまう。

 そうだとしても所詮それは、ただの過去の話でしかないのに。

 今に繋がるものなんかではないのに……。