吐き出す愛



 赤ちゃんペンギンのぬいぐるみを一通り眺めると、今度は私に差し出してくる。


「佳乃ちゃん、これ欲しいなら買おうか?」

「いっ、いいよそんなの! 買ってもらうなんて悪いし。それに……欲しくないし」

「嘘だろ。さっき、ものすごく欲しそうな目で見てたんだから」

「見てたのは単に、可愛いなあって思って見てただけだよ……」


 言葉がだんだん弱気になっていく。
 挙げ句の果てには、ぬいぐるみを見つめたまま固まってしまった。

 ……うん、やっぱり可愛い。

 本物のペンギンを持ち帰りたいっていうのは冗談だけど、このぬいぐるみなら持ち帰りたいって思う。

 小さなサイズ感も見た目も、本物にそっくりな可愛さを醸し出しているぐらいだもの。

 でも、買うとなると少し躊躇う気持ちもあった。

 水槽の前でも散々騒いだのに、ここでぬいぐるみまで買っちゃうなんて。
 ……何だか、子どもっぽいって思われそうだから。

 変な意地が欲の邪魔をする。

 差し出されていたぬいぐるみを受け取り、葛藤しながら赤ちゃんペンギンと見つめ合った。

 しばらくそうしていると、呆れたように、でも優しい顔つきで、有川くんにひょいっとぬいぐるみを取り上げられてしまった。


「あっ……」

「やっぱりこれ、俺が買うよ。俺が佳乃ちゃんにプレゼントしたいから」


 迷ったままではっきりと断れない私を見込んだのか、有川くんはそんな風に言ってみせる。

 思惑通り私は何も言えなくて。
 ぬいぐるみを手に勝手にレジに向かう背中を、ただ見つめることしか出来なかった。

 うわ、本当に買いに行っちゃったよ……。

 嬉しさの反面、やっぱり複雑な思いも混じってくる。

 葛藤によってどっち付かずのままの気持ちは、有川くんが会計を済ませてレジから帰ってきても彷徨ったままだった。

 だけどショップの紙袋に入れられたそれを渡されれば、瞬く間に嬉しい思いが膨れ上がって勝利する。