吐き出す愛



「可愛いー! 持って帰りたくなっちゃう」

「それ誘拐じゃん……」

「いや、冗談だから! だからそんな目で見ないでよ!」


 引き気味に私を見る有川くんに慌てて弁解をする。

 必死になればなるほど、有川くんには笑われてしまった。

 ……もう、有川くんってば。

 膨れっ面で有川くんを睨むけど、そんなのちっとも効果がない。

 結局、彼は始終楽しそうに笑うだけで。
 私の手を引いて次のブースへと向かった。


 それからいくつかの水槽を見て館内を回り終えると、ショップとレストランがある広場に辿り着いた。

 昼時で混雑していたレストランでは軽く食事を済ませて、最後にショップに入る。

 2人でゆっくりとショップ内を回っていると、ぬいぐるみコーナーであるものが目に入った。

 見つめることに夢中になり、つい足が止まる。
 私が立ち止まった加減で、必然的に手を繋いでいた有川くんを引き止めることになった。


「何? 佳乃ちゃん、欲しいものあった?」

「いや、別に何も……」


 見つめていた正体に気付かれたくなくて、慌てて視線を逸らす。
 だけど答えている最中にはもう、有川くんの視線は私の視線の先と重なっていた。

 納得したように笑う横顔に、何だか恥ずかしさが込み上げてくる。


「何だ、これか。さっき、持って帰りたいって言ってたもんなー」

「だから! あれは冗談だってば!」


 ははっと笑う有川くんに、あのときと同じ反論をする。

 ……こうなるのが嫌だから、見ていたものに気付かれたくなかったのに。
 有川くん、絶対にからかうって思ったから。


「へえ、めっちゃそっくりに出来てるじゃん。この赤ちゃんペンギン」


 棚から有川くんの手の中へ、さっき私が釘付けになって見ていた正体が移動する。

 灰色の羽毛に、真ん丸な黒い瞳。
 本物を忠実に再現したぬいぐるみを、有川くんはまじまじと見つめた。