「もー、佳乃! そんなに好き嫌いしてたらダメだよ!」

「好き嫌いって……。でも、関わりたくないのは本心だもん」

「それがもったいないって言ってるのー! 自分とは違うから関わろうとしないなんて、自分の世界を勝手に狭めてるだけじゃん。そんなの、つまんないよ。関わってみたら印象が変わるみたいに、色んな世界を知った方が断然楽しいでしょう?」


 優子の声にはやけに力がこもっていて、気圧されそうになる。

 彼女が言っていることはあながち間違いじゃないだろうし、ここまで必死になって説得されると正しいようにも思えてきた。

 だけどやっぱり心はその意見を上手く聞き入れてくれなくて、馴染まないせいで違和感を覚える。


 ……もしも、だけど。
 自分とは違う人と関わったら、本当に世界は広がるのかな。

 頑張って有川くんと私が仲良さげにしている光景を思い浮かべる。

 でも教室の光と呼べる存在の有川くんと影と呼べる存在の私では、並んだ姿を想像するだけでも明らかにおかしい。歪すぎてむしろ気持ち悪い。

 駄目だ……やっぱり無理!

 私たちは世界が違いすぎて、まるで混ざることのない水と油みたいな関係なんだから。

 だから、絶対に関わらない方が良い。
 優子には大袈裟だと言われてしまうだろうけど、出来ることなら一生のレベルで。