吐き出す愛



 ……ほんと、憎たらしいほどただの馬鹿だ、私は。

 有川くんとデートをしたところで、何の意味があるんだろう。彼女がいる人とデートだなんて、客観的に見たらまずいだけだし。

 でも、そこまで分かっていても、彼の誘いを最後まで断ることが出来なかった。
 今日この瞬間まで、いくらでもチャンスはあったのに。

 その理由は紛れもなく、自分の願望を優先したからだ。

 5年前と同じように、強引に誘ってくれた有川くんとなら。
 また、あの頃のような時間を過ごせるかもしれない。

 それが偽物であってもしがみつきたかった。
 自分の気持ちに気付き始めた今だからこそ、余計に……。


 待ち合わせの時間の9時。

 暑い日差しから逃れるために影がある屋根下で待っていたら、東口と西口を繋ぐ地下通路から有川くんが現れた。

 有川くんもすぐに私に気付いたらしく、呼び掛ける前に先に声を掛けてきた。


「おはよ、佳乃ちゃん。良かった、来てくれたんだ」


 強引に約束を取り付けて電話を切ったのは自分なのに、有川くんは安堵の表情で嬉しそうに私の顔を見た。

 意外な表情に拍子抜けする。

 大胆な行動をするのにあとから不安になっていたなんて……変な人だ。

 そんなのまるで、心から私に会いたかったみたいじゃん。

 有り得ない事実を期待したくなる。虚しいことは分かりきっているから、本気で期待などしないけど……。


「約束したんだから、ちゃんと来るに決まってるでしょう? ……ていうか、デートってどこに行くつもり?」


 目の前に有川くんが居る。
 改めて意識すると、久しぶりに会えて嬉しいという気持ちが込み上げてきた。

 だからそれを隠すために、ちょっとつっけんどんに言葉を返す。