吐き出す愛



 ……私、うたた寝してたのか。

 身の回りを見渡して、自分が机に向かっている最中に寝てしまっていたことに気付いた。

 机の上にはレポート用紙が広げてあって、文章も書きかけのまま放置されている。

 変な体勢で寝てたせいかな、身体が痛い。

 今、何時だろう。

 ……っていうか、この音は……。

 遠い記憶の夢を見ていたせいでまだぼんやりしている頭に、いつまでも呼び掛けてくる音。

 それは机の上のスマホから発せられていた。寝起きに聞くには不快な音が、軽快に鳴り続けている。

 ほったらかしの状態で鳴りやまないそれは、電話の着信音だった。

 寝ぼけ眼で慌ててスマホを手に取り、画面を確認する。

 表示されている名前を見た瞬間、残っていた眠気は一気に身体から吹き飛んだ。


「……えっ、有川くん……?」


 意外な人物からの着信が信じられなくて、パチパチと瞬きをしてからもう一度画面を見る。

 それでもやっぱり変わらず、着信相手は有川くんだった。

 鳴りやまない音に応えようと、画面の上に指を持っていく。
 でも触れる直前に動きが止まってしまい、なかなか電話に出ることが出来なかった。


「どうして急に、電話なんか……」


 彼女と居る有川くんの姿を電車で見たあの日から、1ヶ月近くが経った今日まで。
 一度も有川くんから連絡はなかった。

 きっともう、関わることはないんだ……。

 だからこそ、中学校の卒業式に思ったことを再び思ったぐらいだった。

 でもその一方で、有川くんのことばかり考えていたのだから笑っちゃうよね。

 そしてそんな私を更に振り回すように、有川くんから掛かってきた電話。

 久しぶりに連絡してきたと思ったら、電話だなんて……。

 食事の約束をしたときはメールでやり取りをしていたから、初めての電話に戸惑ってしまう。