吐き出す愛



 ああ、もう、嫌だ。
 どうしてこんな気持ちになるんだろう。

 息苦しさにもやもやして、むかむかする。

 こんなのまるで、嫉妬してるみたいじゃん――。

 意識してしまうと、名前を知らなかった感情がひょっこりと少しだけ顔を出した。
 そんな状態で目の前の2人を眺める私は、きっと惨めで情けない。


 2人は駅の東口に向かって歩いていった。人混みの中では、すぐにその姿を見失ってしまう。

 結局有川くんは、私に気付くことはなかった。

 彼女と居る有川くんに気付かれても、気まずくて困るだけ。
 そう考えると気付かれなくて良かったはずなのに、ちょっとだけ悲しくもなった。

 ……いつもこうだった。
 私が有川くんに視線を向けていても、彼はちっとも私には気付かない。

 有川くんはどこに居ても誰と居ても目立って、嫌でも私の中に入り込んでくるのに。
 私の存在は、有川くんの中でいつもちっぽけなんだ。


「……そっか。所詮軽い気持ちで、告白したぐらいだもんね」


 5年前にも、嫌になるほど思い知った事実。
 本気じゃなかった。大勢居る遊び相手の一人だった。

 そんなこと知ってる。
 それなのに、私は再会したことに無駄に浮かれていた。会えて嬉しいと思っていた。

 ……どうしてだろう。

 いつの間にかこうやって、私ばかりが有川くんの存在を大きく感じている。

 こんなの、意味が分からないよ……。


『特別なんだね、その彼は』


 いつだったか、ちえりに指摘されたことを思い出す。

 ……そっか、とっくに私にとって有川くんは、特別な人だったんだ。