吐き出す愛



 ――ああ、ダメだ。

 また本音から遠ざかろうとしてる。

 ちえりの言葉に胸を打ったばかりなのに、どうしてまたそんなことを考えちゃうんだろう。

 ただ、素直になればいい。
 それは十分、分かっていることなのに……。


 考えを巡らせていると、目まで回ってきそうだ。

 ぎゅっと、瞼を強く閉じる。

 すると、すーっと有川くんの姿が浮かんできた。まるでそれが、当たり前のように。

 しかも暗闇の中で見えたのは、この前まで探していた15歳の影ではない。

 20歳の、大人びた顔で笑う彼。

 ……ああ、そっか。
 私の中で止まっていた心も、ちゃんと時を刻んで前に進んでいたんだ。

 有川くんと、再会したことで。


 ねえ、有川くん。

 私、会いたいよ。

 有川くんはこの前の一度きりで良いかもしれないけど、私はまた会いたい。

 もっと会って、もっと話して、もっと知っていきたい。

 今更そんなことを思うなんて、もう手遅れなのかな……?



 ショッピングモールからの帰り道。

 別の路線の電車に乗るちえりと別れて自分の乗る電車を待つ間に、スマホのアドレス帳を開いた。

 一番上に表示される“有川智也”という名前。
 そこから新規メールの作成画面を呼び出すけど、本文に文字を打つことはなかなか出来なかった。

 会いたいと思っているのなら、それを素直に伝えればいい。自分から有川くんを誘えばいい。

 ちえりと話してからそう意気込んでいたのだけど……何か、ダメだ。
 意気地無しの心が邪魔をする。

 しばらく画面の上で、辿り着く場所がない指が彷徨った。試しに何か文字を打つ勇気さえ出てこない。

 結局、そうしている間にホームに電車がやって来てしまい、メールの本文は真っ白のままで終わった。