確実に膨らみ上がる、得体の知れない正体。
こんなもの、気付いてはいけない。知られてはいけない。……そんな気がするんだ。
私自身にも、友達にも、誰にも。
――有川くんにも、絶対に。
明らかに様子がおかしいくせに何も話そうとしないから、ちえりはやれやれと溜め息を吐いた。
だけど呆れているように感じるそれとは裏腹に、私を見る目は穏やかだった。
まるでお母さんみたいな、安心感を抱けるオーラを纏っている。
「まあ、深くは聞かないけどさ、一つだけ言わせて。佳乃はさ、自分の本音にもっと素直になるべきだよ」
「素直、に……?」
「そう。自分の気持ちに迷ったなら、素直に思ったことを信じればいい。意地張って本音じゃないことを貫き通したって、何の意味もないんだから」
ちえりの言葉は、とても頼もしかった。ほとんど状況なんて知らないのに、的確に言葉をくれる。
不思議だけど……。
何も言わなくたって、ちえりには私が欲しがっている言葉が分かるみたいだ。
「……そうだよね。素直になればいいんだよね」
でも私は、それをあの頃から出来なかった。そして今も出来ないまま。
素直になるって、本音の通りに生きるって。簡単なようで、想像しているより遥かに難しい。
だってそれは、自分の根本的な部分を晒け出すことになるから。
素直になるってことは、胸の奥底に潜めたものまで出すことなんだ。
……そんなの、否定されたら終わりだよ。
もし自分の気持ちを認めても、それを受け入れてもらえなかったらどうするの?
拒まれて、誰にも必要とされない気持ちは、どうすればいいの?
自分の中でしか意味を見出だせなくなれば、それこそ抱えているだけで余計に苦しくなるだけだ。
だったらやっぱり、自分の中で正体も知らないまま隠し持っている方が良い。
それともいっそ吐き出して、最初からなかったことにすればいいの……?



