吐き出す愛



「ちょっと、スプーン向けないでよ。……っていうか、私、そんなに様子変かな?」


 向けられたままのスプーンを目で示したあと、自分の手の中のカップに目を向ける。

 あまり食が進まなくてほとんど放置され気味の中身は、元の形を保っていなかった。

 どろり、と溶けて混ざり合った、2色のアイスクリーム。

 歪で、ぐちゃぐちゃ。
 カップの中身は、まるで今の私の心の中みたい。


「変だよ。ものすっごく変! 月曜日からずっと、無理して笑ってるみたい。……悩み事でもあるの?」


 はっきりとした声に目が丸くなる。

 ……驚いた。
 私、そんな風に見えてたんだ。

 有川くんに会ったことは、ちえりに話していない。
 ずっと、自分の心に迷っていることも隠してきたつもり。

 それでもちえりは、気付いたんだ。私が何かに気を捕らわれていることに。

 無理して笑っているつもりはなかったけど、きっと本当にそうなんだろうな……。

 私の様子を変だと言うちえりの眼差しが心配そうだから、間違いない。


「……そっか。ちえりには分かっちゃうんだね。心配してくれてありがとう。でも悩み事ってほどのことじゃなくて、ちょっと考え事があるだけだよ」

「それってもしかして、前に話してくれた彼のこと?」

「……うん。まあ……そんな感じ」


 返事の歯切れが悪くなる。

 そうだ。ちえりには少しだけ有川くんのことを話してあったんだっけ。

 ……でも、この前会ったことは話せないよ。

 ちえりが相談相手として頼りないわけではない。

 ただ、言えない。ちえりに限らず、誰にも。
 だって、口にすればあの気持ちの正体に、また近付いてしまう気がするから。

 心の奥底で眠っている感情を、見透かされてしまいそうで……それが、とても怖い。