「……でもさ、智也って根は良い奴だよ。見た目があんなのだし、悪い噂も多いけど。佳乃は真面目だからああいうタイプが気に食わなかったり関わりたくないって思うのも分かるけど、ちょっとはあいつの良いところも見て信じてやってよ。せっかく隣の席になったのに、関わらないなんてきっとつまんないよ」
そうやって諭す優子の声は優しかった。
何だか、有川くんのことをとても特別な存在に思っている雰囲気が伝わってくる。
もしかして……。
「優子って、有川くんのこと大切に思ってるんだね。もしかして……好きなの?」
言葉の後半は声量をなくして、囁くようにそう聞いた。
すると優子は驚いた様子で何回かぱちくりと瞬きを繰り返す。
それから有川くんと同じように大口を開けて笑い出した。
「ははっ! まっさか~。そんなわけないじゃーん!」
「違うの? 有川くんのこと話してる優子を見てると、そんな感じがしたけど……」
「全然違うよー! そりゃあ智也とはご近所さんで幼稚園に入る前からの付き合いだから、家族みたいには大切だよ? でも、恋愛感情の好きはないよ。智也は単に、幼馴染みで良い奴ってだけだから」
「……そうなんだ。良い奴か……」
「そうそう。……っていうか、あたしの話はいいから! とりあえず、智也とは口ぐらい利いてあげてね?」
「えっ、何で?」
一度は私から逸らした話題が再び降りかかってきた。
どうして私がわざわざ、嫌いな有川くんと口を利かなければいけないんだろう……。関わりがないのだから、口すら利く必要がない気もするけれど。
訳が分からずに、瞬きを繰り返すだけでなく首も傾げる。
すると優子はちらりと有川くんの姿を確認して、口元を片手で隠しながら小声で言った。
まるで、秘密の話をするみたいに。



