吐き出す愛






 翌日の日曜日。
 チラシには予約不要の文字があったので、さっそくヘアサロンに足を運んだ。

 住宅街の中に佇むその外観は、周りの生活感が溢れる空間からは少し浮いて見えるぐらい新しくて小綺麗だった。

 赤茶色のレンガ作りの壁に、路上に面した大きなガラス窓。
 お客さんの顔が見えないようにしているらしく、その中間の高さは磨りガラスで波打った模様が描かれていた。

 ガラス扉の側にある立て看板に書かれた店名とチラシの店名を照らし合わせて、ここが目的地であることを確認する。

 躊躇う気持ちが勝ってしまう前にと思い、さっそく初めての場所に足を踏み入れた。


 ――チリリン。


「こんにちは、いらっしゃいませ!」


 可愛らしいベルの音と共に、男女2人の重なった声に出迎えられた。

 咄嗟に店内を確認すると、3つあるスタイリングチェアのうち2つの席が埋まっていた。

 美容師さんらしき店員は2人。
 奥でお客さんの髪の毛を巻いている最中の男性と、今私に寄ってきた女性。
 落ち着いたブラウンの髪の毛がお揃いの2人は、どちらも20代に見えた。


「いらっしゃいませ。ご来店ありがとうございます。さっそく案内しますので、お荷物をお預かりしてもよろしいでしょうか?」

「は、はい……」


 色素の薄い瞳で見つめられ、何だか落ち着かない。でも切れ長の目を細めた笑みは柔らかくて、変な緊張もすぐに解れた。

 バッグを預けて、案内されるままに空いていた一番手前の席に座る。
 隣の老婦人は髪を染めているらしく、頭にラップを巻かれた状態のままうたた寝をしていた。

 カットクロスを着せてもらったところで、女性美容師さんと鏡越しに目が合う。