吐き出す愛







「あっ、電話かかってきてたんだ」


 土曜日の夕方。
 スマホにお母さんからの着信があったことに気付いたのは、一人暮らしのマンション近くにあるコンビニでのバイトを終えて帰宅したあとだった。

 着信時刻は、まだ数分前。どうやらバッグの中で他の荷物に埋もれて、バイブ音に気付かなかったらしい。

 きっと、大して急ぐような用事ではないだろう。お母さんは週末になると、私の様子を探るために気まぐれで連絡をしてくから。
 これも、いつものそれだろう。

 スマホを抜いたバッグとさっきポストから引き出してきた郵便物をテーブルに置き、ソファーに座る。
 特に急いで連絡しなくても良いような気もしたけど、心配性なお母さんのためにさっそく折り返した。

 タイミングが良かったらしく、2回目の呼び出し音が鳴り始めたところでお母さんが出る。


『もしもし』

「もしもし、お母さん? 佳乃だけど、さっき電話くれたのに出られなくてごめんね」

『良いのよ、それぐらい。バイトに行ってたの?』

「うん。でも今は終わって、ちょうど家に着いたところだよ」

『そう……。バイトを頑張るのも良いけど、あんまり無理はしちゃダメよ? この前のゴールデンウィークもバイトばっかりして帰って来なかったし、お母さん心配だわ』

「ああ、うん……」


 案の定心配の思いを含んだ声で言われ、苦笑いをしながら歯切れの悪い返事をする。

 ゴールデンウィークに入る前から聞いていた言葉のせいで耳が痛かった。


 一人暮らしを始めてから、長期休みなどには必ず実家に帰るようにしている。

 でも今月始めのゴールデンウィークには帰省しなかった。
 それは4月の後半に差し掛かった頃から決めていたこと。