「特別なんだね、その彼は」
私の言葉を聞き終えたちえりは頬杖をついて手を組むと、優しい瞳で口火を切った。
穏やかな声は、重苦しかった気持ちを少しだけ軽くしてくれる。
「あたしは佳乃とその彼がどんな関係だったのか、詳しくは知らないけどさ。その彼のことを話す佳乃を見てたら分かるよ。思い入れがあるっていうか、特別な人だって思ってること」
「そうなのかな……」
「自覚してないだけだと思う。だって、嫌いで振った人のこと、そこまで考えてるんだもん。現にその特別な気持ちは、佳乃の行動からも十分滲み出てるし」
「どういうこと?」
「小山くんを振ったことだよ。あんなにいい人をあっさり振ってるのも、そうだけどさ。佳乃が言う彼とは違って、小山くんのことは振ってもまだ考えてるとか、そういうことはないでしょ? 同じように告白を断ってるはずなのに、
彼の方だけ今も忘れられない。それってその彼には、小山くんには感じなかった特別な何かがあるってことだよ。そういう風に特別な気持ちを感じたのなら、その気持ちが佳乃の彼に対する気持ちの答えなんじゃないかな?」
「特別な気持ち、か……」
それはやっぱり、恋愛感情っていうこと?
いまいち私の中にそういう気持ちが存在しているとは思えない。
だけどちえりの言葉は、確かに正しいのかもしれない。
私だって小山くんに告白されたとき、あの頃の彼が特別な存在だったということには気付いたから。
……どうしてだろう。
自分でも、こんなにも彼が特別な存在だってことは理解しているのに。その気持ちを否定したい自分も居る。
彼に抱く気持ちが恋愛感情かもしれないという疑惑が浮かべば浮かぶほど、その影は濃くなるような気がした。



