……彼は、好きな人ではないと思う。
それは15歳のときから、変わっていないはずだし。
でも、ずっと私の中に居座っているのは確かで。
胸の隙間を求めるように探していることも、自覚はしている。
それはある意味、彼のことを気にしていると言えるのかもしれないけど……。
「またその顔してる」
ちえりの一言で我に返ると同時に、ドキリとした。
どうやら彼のことを考えていたら、またちえりが言うような顔になっていたらしい。
自分では意識していなかったけど、私、そんなに深刻な顔になっているのかな。
彼のことを思い出しているだけなのに、どうして……?
「ほらー! その顔になってるってことは、やっぱり思い当たる人がいるってことなんじゃないの?」
「だから、好きな人はいないってば。ただ……」
「ただ?」
「……今でも、思い出す人がいる」
意を決してそう口にすると、気持ちは軽くなるどころかむしろ重くなったような気がした。
きっとこの気持ちは、私が彼のことを忘れない限りずっと付きまとってくる。……そんな気がした。
「思い出す人……? 何それ。その人には今、会ってないってこと?」
「うん、そう。中学校の卒業式以来、全然会ってない」
「なるほど。……で、その思い出す人と佳乃はどんな関係なの? 恋愛未経験だって言うなら、好きだった人とか、元カレでないことは確かなわけだけど」
「……何て、言えばいいんだろうなあ。あえて一言で説明するなら、嫌いなタイプの人かな」
「……はい?」
私の言葉を聞くなり、ちえりはあからさまに怪訝な顔になる。
本当はもう少し前から表情は変わり始めていたけど、さらにそれが確定した感じだ。



