吐き出す愛



「……小山くんは、良い人だとは思ったよ。だけど、好きとか付き合うとか……。何か、そういうのは考えられなくて。だから、告白されたけど断ったの」

「ふうん」


 小山くんと会った日のことを軽く話したあとに、告白のことをそう話した。

 それを聞いたちえりは納得しているのかよく分からない曖昧な声を出しただけなので、中途半端に気まずい空気が流れる。

 それを誤魔化すように啜ったうどんはすっかり伸びていて、あんまり美味しくなかった。
 それでもしっかりと平らげて、ごちそうさま、と箸を置く。

 ちえりも、ほぼ同じタイミングで食べ終えていた。

 お茶で喉を潤していると、ちえりがやけに神妙な顔つきで言った。


「……ねえ、佳乃ってさ、好きな人がいるんじゃない?」

「……えっ?」

「ずっと思ってたんだよ。佳乃、前に好きな人はいないって言ってたけどさ。どうもそんな風には思えないんだよね。ときどき、誰かを思ってるような顔して、ぼーっとしてることとかもあるし」

「どんな顔よ、それ……」


 ははっと苦笑いをする。
 でもその胸の内は、あまり穏やかではなかった。

 きっとちえりが言っている顔とは、彼のことを思い出したり、考えたり、探しているときの顔だろう。

 だけど彼は、好きな人なんかではない。

 だからちえりが言っていることは、半分は正しくない。
 そのはずなのに、何か決定的なことを言われたように動揺している自分が居た。


「言ったでしょう? 好きな人はいないって。今まで恋愛未経験だって言ってるのに、そんなことあるわけないんだって」

「いーや、絶対そんなことある! だって、好きな人がいますってオーラを感じるんだもん。本当は自分が気付いてないだけで、好きな人がいるんじゃない? それか、気になる人とか!」


 向かいに座っているちえりが身を乗り出してまで言ってくることに反応して、ついつい彼のことを考えていた。