吐き出す愛



「……あ、そういえばさ、」


 ちえりが鯖の味噌煮の身を箸でほぐしながら、ふと思い出したかのように声を出す。

 しっかりとした鯖の身が少し美味しそうに見えながら、うどんの間に挟まっていた薄っぺらいかまぼこを齧った。


「佳乃、小山くんのこと振ったんだって?」

「……え?」


 驚いて気が抜けた拍子に、箸の間から半分だけ齧ったかまぼこがうどんのつゆの中にポチャリと落下した。
 動揺した気持ちを隠すように、慌ててそれをもう一度箸で拾い上げる。

 どうして、ちえりが小山くんとのことを知っているんだろう……。

 私と小山くんを出会わせて、小山くんの情報を教えてくれたのは、確かにちえりだけど。
 小山くんと2人きりで会ったり、もはや告白されたことは、まだちえりには話していなかった。

 まだすべて、私の中で留めたままにしていたんだ。

 疑問を瞳に込めてちえりを見ると、少しだけ不服そうな顔で見つめられる。


「さっき1コマ目で小山くんに会ったとき、教えてくれたのよ。最近佳乃と進展はあったのかって聞いたら、振られたなんて言うものだから驚いたわよー。いつの間に、何でそんなことになってるの? あたし、小山くんなら佳乃も付き合う気になれると思ってたのに」

「……」


 ちえりの言うことに、何も言い返せなかった。

 私だって、少しは期待してたよ。小山くんなら……って。

 それでもやっぱり、行き着く答えは同じなんだ。

 小山くんから来ていた連絡がすっかり途絶えても、会わなくなっても。それに寂しさは感じなくて。

 キャンパス内で小山くんの姿を見つけることもしなければ、意識することもないぐらい、小山くんへの未練は微塵もない。

 あんなに良くしてくれて真っ直ぐ好意を向けてくれていた小山くんには申し訳ないけど。
 薄情だと思われても、それが答えだ。