吐き出す愛







 水曜日の午前中の講義は、どれも友達と被っていない。そんな日は昼休みに食堂で落ち合うことにしているのだけど、今日は合流したのがちえりだけだった。

 混雑している人の合間を、ちえりはトレイを持ちながらも器用に通り抜けて来る。席を確保していた私は、ちえりに問いかけた。


「あれ? みんなはどうしたの?」


 他の友達はさっきの2コマ目まで、ちえりと同じ講義を受けていたはずだ。いつもなら一緒に食堂に来るのに、1人で来るなんて珍しい。


「午後の選択科目が休講になったから、もう家に帰るんだって」

「ああ、そっか。そういえば休講情報、出てたね」


 今朝大学に着いたときに掲示板で確認した休講情報を思い出す。
 そういえば、羨ましいなって思ったんだった。

 午後から私とちえりが一緒に受ける選択科目は、あいにく休講になっていない。

 ……まあ、のちに補講になるよりは良いけれど。


「佳乃ってば、またきつねうどん? 好きだねー、それ」

「ちえりだってまた日替わり定食なのに、人のこと言えないよ」

「日替わり定食はその名の通り日替わりで中身が変わるから、一緒じゃないんですー」

「えー、何それー」


 お互いのトレイの上に載った今日のお昼ご飯のメニューを見ながら、そんなちょっかいを出しあう。
 大学で何人か友達は出来たけど、こういうことを言い合えるのはちえりだけかもしれない。

 別に他の友達と気が合わないとか、仲が悪いとか言うわけではないけど……。

 自分と人との距離に線引きをしがちな私には、程よい距離感を保って接してくれるちえりぐらいの性格がちょうど良いのだと思う。

 少しだけ、優子に似ているから。