吐き出す愛



 綺麗なものは不思議と、自分の中の一番良かった記憶を呼び覚ましてくるようだった。
 脳裏に残像が浮かんで目を細めると、細い光が瞳の中で輝いていた。

 橋の上は風が吹きさらしの状態で、背中の真ん中にまで伸びた髪を容赦なくなびかせる。さらさらと、撫でるような風だった。


「――俺、高崎さんが好きです」


 川面に反射した光の波を眺めていると、ふいに力強い声が鼓膜を刺激した。

 時折通っていく車が橋を揺らす音にも負けない、芯の通った声。
 横を見ると、少し距離を開けて側に立っていた小山くんが、真っ直ぐ視線を向けてきていた。

 街灯に照らされて露わになった小山くんの表情は緊張しているみたいに強張っていて、さっきの声の意味をようやく理解する。
 普段の落ち着いた声とは似つかなくて、動揺が鼓動に伝わっていった。


「え、えっと、あの……」


 突然の言葉に上手く返す術を知らなくて、どもることしか出来ない。

 ……今、好きって言った?

 小山くんが、私のことを好きだと言ったの?

 それは紛れもない事実だと分かりきっているくせに、そんなわけないだろうと勝手に思い込んだ。

 出会ってまだ、1ヶ月少し。会ったのは、初めの合コンを含めて今日がやっとの3回目。

 まさかそんな短期間で告白をされるなんて、思ってもいなかったわけで。容易く好きだと言える心境を、私は信じることが出来なかった。

 それを言葉にするのも出来なくて黙ったまま固まっていると、痺れを切らしたのか小山くんがはっきりとした声で言った。


「初めて会ったときから、ずっと気になってたんです。よかったら、俺と付き合ってくれませんか?」


 歪みのない純粋そうな瞳が、真っ直ぐ私だけを見つめてくる。
 それがあまりにも真剣すぎて、思わず視線を逸らして地面を追った。