吐き出す愛



 お造りに小鉢、焼き物や茶わん蒸し。
 絶妙な配置と色使いのそれは、旬のものをばかりがふんだんに使われていた。

 その上一つ一つの料理の味が繊細で、素材の味を存分に味わえるもので美味しかった。私にはもったいないぐらいの上品な料理。

 ……でも、変なの。

 料理は満足出来るものだし、食事の途中で小山くんが好きなバスケの話を聞くのも嫌ではなかったのに。

 小山くんと過ごすその時間は、それほど楽しいとは思えなかった。



 食事を終えて、やっぱり申し訳ないような気持ちを抱きながらも奢ってもらったあと。

 小山くんの提案で、少しだけその辺を歩きながら話すことになった。
 奢ってもらった手前もあるし、今日はバイトも休みだったから、言われるままに小山くんの誘いに乗った。

 飲食店街の付近は居酒屋も多いので夜の7時を回っても賑わいが消えていなくて、辺りもとても明るく感じる。

 だけどそこから少し歩いて住宅街の方へ向かうと、一気に静けさを纏った夜が現れた。そこでやっと、空がすっかり闇に染まっていたことに気付く。

 飲食店街と住宅街の間には名前の知らない大きな川が流れていて、その上に架かっている橋の歩道を小山くんと歩く。
 川と街よりも少し高い位置にあるその橋からは夜景がよく見えると教えてもらい、自然と2人の足はその中央で止まっていた。


「うわ、綺麗……」

「でしょう? 橋から見る夜景も、結構良いものですよね」


 遠目から見る飲食店街も住宅街も、すっかり光の光景に変わっていた。

 派手なネオンの光と、淡く漏れる小さな家々の光。
 その間に挟まれて、光に見とれた心はまた揺れ出す。