硬い表情で小山くんの返事を待ってみると、おしぼりで手を拭いていた小山くんの目が驚いたように丸くなる。
それから質問の意味を理解したらしく、くすりと微かに声を漏らして笑った。
「心配しなくても、そんな手の届かないような値段ではありませんよ。ここの料理、とてもリーズナブルで美味しいんです。ほら、品書きを見てください」
「……確かに、リーズナブルですね」
小山くんに渡された竹で出来ているらしい品書きには、確かに私でも出せる金額のものばかりだった。
凝った感じの献立名にはまた戸惑うものの、これならそれほど心配しなくてもいいみたい。
あからさまに安堵した表情になっていたらしく、私の様子を見てまた小山くんが静かに笑う。
「今日、奢らせてください」
「……え?」
「ここのお会計は俺が出すので大丈夫ってことです」
「そ、そんなの悪いですよ! 私、ちゃんと払いますから……!」
自分が出した声は思いのほか大きくて、店内に流れる琴の音色を掻き消してしまうほどだった。
いくらここが個室とはいえ、さすがに羞恥心を覚える。
かあっと身体の内側から熱が込み上げてくるのを感じて急にしおらしくなると、小山くんが落ち着いた優しい声で言った。
「高崎さんが今日会ってくれることになって、俺すごく嬉しかったんです。結構強引に誘ったから、断られると思ってたし……。だから、お金でそのお礼をしようっていうわけじゃないけど、感謝のつもりってことでここは奢らせてください。俺が高崎さんに奢りたいだけだから、そんな遠慮しなくても大丈夫ですから」
にっと歯を出して、照れたように笑う小山くん。
不覚にもその表情が……彼に、似ているように思えた。



