落ち着いていて、思ったことは素直に口にして、静かに笑みを浮かべる人。
どちからと言えば自分の世界に近い人で、嫌いなタイプではない。
……それなのに、どうしてだろう。
小山くんと一緒に居る自分には、何故かいつだって違和感が伴っている。
それを分かりきってるくせに小山くんの誘いを全部断らずに受け入れているなんて、私もだいぶずるい人なのかもしれない。
食事の場所は小山くんにおまかせしていた。
そんな小山くんのあとについて行って辿り着いたのは、お洒落な飲食店街の一角にある料亭。
キャンパスがある駅から電車に乗って3つ目の駅。そこから降りてすぐに立ち並ぶ駅前の場所にそれはあった。
小山くんが電車の中で話してくれたのだけれど、その駅が地元なのだと教えてくれた。駅前は飲食店街で賑わっているけれど、10分ほども歩けば閑静な住宅街が広がっているのだとか。
私とは違って実家から大学に通っている小山くんの家も、そこにあるのだと言っていた。
「……あの、もしかってここって、お高い感じだったりします?」
飲食店街の中でも断トツ落ち着いた雰囲気の店構えの料亭を見て、つい尻込みしそうになった。おまけに小山くんが予約していたことを知って、余計に不安が募った。
旅館のような古風な雰囲気が漂う店内。
女将さんのような初老の女性に案内されて小山くんと一緒に入ったのは、その店の一番の奥にあった個室で。
思わず値段のことを聞かずにはいられなかった。
いや、だって。
宴会でもないのに個人で予約をするようなお店なんて、同年代の子たちとはさすがにまだ来たことがない。
お金はある程度用意してあるけど、足りなかったりするのかな……。
おまかせするとは伝えたけど、さすがにこういう場所に来るとは思っていなかったから、値段の予想が私には出来ない。



