吐き出す愛



【すみません。講義が長引いて今から向かうところなので、少し遅れると思います。出来るだけ急いで行きます】


 先程受け取ったメッセージには、そう書かれていた。
 律儀な文面を見て、悪い人ではないんだけどなって、自分に言い聞かせるように思う。

 食事に行くことになった今日の待ち合わせの時間は、小山くんの最終講義が終わったあとにしようということで4時半になっていた。
 スマホの上部に表示されているデジタル時計は、16時15分を示している。

 小山くんが受けていた4コマ目の講義が終わるのは4時だから、今連絡をくれたことを考えると確かに講義は長引いたらしい。
 でもキャンパスからこの駅までの道のりを考えると、待ち合わせ時刻に間に合わないことはない。

 だけどあえてわざわざ連絡をして、急ぐということまで報告してくれるなんて。変に正直な人だ。

 きっと今頃小山くんは、駅に向かって走っている。

 その姿が少し不憫に思えて、【急がなくても大丈夫なので、ゆっくり来てください】と送っておいた。
 するとすぐに【ありがとうございます。でも、やっぱり急ぎます】と返って来た。

 ……どこまで正直なんだろう、この人。

 真面目すぎる文面に若干拍子抜けしながらも、私も待ち合わせ場所に向かうために、居心地の良いコーヒーショップをあとにした。



 4時25分。

 のんびりと歩いて駅の西口前に辿り着くとすぐに、キャンパスに繋がる県道脇の歩道を駆けてくる存在に気付いた。

 案の定、小山くんはとても急いだ様子で走っていた。

 まだ春の夕方は少し肌寒いぐらいだというのに、小山くんの前髪は汗で額に張り付いている。