吐き出す愛



 今、小山くんと連絡を取り合っている自分が、違和感で仕方がない。

 合コンの場でたまたま隣に座った小山くんとは、連絡先を交換していた。
 でもそれは社交辞令の一つでその場限りのものだと思っていたから、まさか今もなお小山くんと繋がり続けるなんて想像もしていなかった。

 しかもすでに先週の金曜日、小山くんと2人きりで遊びに行ったことがある。
 小山くんが映画の試写会の鑑賞チケットに当選したとか何とかで、一緒に行ってくれる人を探していたらしく、何故か私が誘われた。

 別に小山くんは悪い人という印象もなかったから、これもまた一応社交辞令のつもりで観に行く誘いに乗った。
 ……正直言うと、観たかった映画だったし。

 映画を観て、その日はすぐに別れた。観終わってすぐにお茶でもどうかと誘われたけど、バイトがあったからそこは丁重に断らせてもらった。

 でもお茶を断ったら少し残念そうな表情をしていて、だったら今度食事にでも……と、次の誘いをされてしまった。

 その場では返事を濁して別れたわけなんだけど、結局1週間後である今日にまた会うことになっている。

 最近になって薄々と気付いてきたことだけど、私って押しに弱いんだよね……。
 強い意思で迫られると、どうしても断ることが出来ない。

 小山くんの熱心な誘いは、いつかの彼を思い出させるものだった。そして今の私もあの頃と変わらずに、何だかんだ思いつつもそれを受け入れている。

 ……馬鹿げてる、よね。

 あれほど嫌いだと言い張ってきた彼のことを、恋に臆病になる原因になった彼のことを、今でも心のどこかで探しながら。
 私はまた、同じことを繰り返そうとしている。

 好きの気持ちもまだ分からないくせに。
 小山くんなら胸の隙間を埋めてくれるかもしれないなんて、都合の良い希望ばかりを抱いてるんだ。