「……さよなら」


 きっと、もう、会うことはないだろう。

 だからきっと、いずれは彼の思い出も忘れられる。忘れられなかったとしても、昔のことだって、笑って話せる日も来る。

 そうすれば胸の隙間だって埋まるよね。

 今はもう、そう信じることしか出来ない。

 信じるというよりもそう自分に言い聞かせないと、あの日のように涙が出そうだった。


「お待たせー! 帰ろっかー」


 有川くんの姿が校門に辿り着いたとき、帰ってきた優子の声に振り向く。
 留まろうとする気持ちを振り切るように、笑顔で答えた。


「……うん、帰ろう!」


 私は私で、自分の道を歩いていく。
 有川くんが居ない、保ってきた自分の世界へ続く道を。