「川瀬?」





だいぶ一人で考え込んでいたらしく、姫野は珍しく心配そうに私の顔をのぞいた。




「平気!」



私はまたさらに熱を持った顔を見られないように、姫野より一歩前に出た。



そこから私たちは喋らなくて


でもなぜかそれが心地よかった。




私が前。姫野が後ろ。




そんないつもと違う距離をとりながら歩くこと20分




「…じゃあ、ここうちだから」



お母さんがお父さんと喧嘩してまで譲らなかったレンガの外観の一軒家



「おー。んじゃな」



「送ってくれてありがと。気を付けてね!」




私が、前で



姫野が後ろ






隣よりもちょっと寂しい距離。







なぜかその距離が少しだけ、少しだけ嫌だなって思ったことは







気づかないふりをした