「お前って百面相?」



低くて、少しハスキーな声。


すごく、安心する。



例えその声が私を貶すような言葉を発してても。




「姫野!いつから起きてたの?」



も、もしかして髪に触れようとしてたのがばれてたりするのかな!



そう思うと私の顔はカァッと赤くなった。




「お前がなんかぼそぼそ言ってたあたり。顔赤くして何したの?俺のこと襲っちゃった?」



ふざけて身を守るように自分を抱く姫野を見て、なんか悩んでることがどうでもよく思えてきた。




「ばっかじゃないの!ってかなんであんた寝てんのよ!早く片付けて帰るよ!」



気付いたらいつもの調子になってた。




私はほうきを取ろうと掃除ロッカーを開けた。



その後ろで姫野が、少し心配そうにでも愛しそうに私を見てるなんてこれっぽっちも想像してなかった。