隣の席の姫野くん。






「ちょっ!離してよ!」



俺は川瀬が逃げないように、腕に力を入れた。


ここで川瀬になんかされるわけにはいかねぇんだよ。



俺は秀平を見て頷いた。



仕上げの合図。



『笹野。川瀬を傷付けたのは間違いだよ。相手が悪かった。でも、それでも川瀬じゃなきゃだめだったんだろ?』




『な、なんでよ!川瀬さんなんかどうだっていいわ!』




『羨ましかったんだよな…?』




いつもの真顔で笹野に近づく秀平。



秀平の言葉に笹野は息を飲んだ。



『自分には本当の居場所がないのに。本当の自分を受け入れてくれる人もいないのに。川瀬はどっちも持っていたから。』




「…え?」




小さく声を漏らした川瀬を、より強く抱きしめた。





『いっつもありのままの自分でいられる川瀬が羨ましかった。ありのままの川瀬を好きでいてくれる昂がいて、羨ましかった。だから川瀬の居場所を壊して、昂も手に入れようとした。』




『…わた、しは…』