恋するほど   熱くなる

荒木さんはアランの連絡でこの急展開に喜んでいた。

私の心配をよそにだ。

バリアーのアルバム用に書いた詩は全部で十作あったが

そっちは手付かずで

まずはアランのパートナーに私が務まるかどうかの方に気をもんでいるようだった。

私はどうでもいいのにと思った。

もしこれが決まったら

ますます卓巳と離れ離れになってしまうとも思った。

別荘から車で移動しスタジオへ入った。

私はバーで軽くアップして待った。

アランがエージェントらしき人を連れてきた。

「彼はハモンド・フォスター。僕のエージェントだ。」

彼は荒木さんと私に握手をした。

「フォスターです。よろしく。」

「美莉、始めよう。」

「はい。」

私はアランと小一時間踊った。

その間、荒木さんはフォスター氏としゃべっていた。

「日本公演は当たりましてね。毎年予定しているらしい。もし彼女がアランの次のパートナーになったら、公演前までは最低二ヶ月はイギリスでレッスンすることになるでしょう。」

「そうですか。以前のパートナーも契約ですか?」

「アランは毎回パートナーを変えます。多い年で一年に三人変えました。」

「なぜですか?一度踊ったパートナーは使えないということですか?」

「彼のポリシーだと思う。公演を客に満足させるために常に新しい人材を求めるというのが彼の中にあるのでしょう。プロとして妥協できない一面ですね。」

「なるほど、わかります。」