その様子を見て私はピンときた。

さっき沙良さんが言っていたのはこのことだったのだと。

荒木さんは長身でいかにもモデル体型だ。

ルックスもいいし

モデルに間違われても全然不思議じゃなかった。

これはかなりマズいと思った。

今夜のコンサートへ盛装して行ったら

女の子達に取り囲まれるに決まっている。

どうしよう。

私じゃ、荒木さんのパートナーにはとても見えないし

コンサートに来る他の客よりはるかに見劣りするし

沙良さんレベルの大人の女でなくちゃダメだ。

私はレジに並びながらぶつぶつ言った。

「美莉、気が済んだ?」

「はい。」

私は荒木さんの隣りを歩いた。

横からちらりと彼を見上げた。

どっからどう見てもモデルだ。

この街でこの外国人の中にいると

彼はやはり目立った。

日本だと目立たないのに困った。

長身で黒髪、切れ長の目、どう見てもモデルが歩いているとしか見えなかった。

ホテルまで通りを歩いているだけなのに

すれ違う若い女の子達がジロジロ彼を見た。

どうしよう。

今夜のコンサート会場で華やかにドレスアップした女達に囲まれでもしたら

と私は悩んだ。