恋するほど   熱くなる

バリアーの全国ツアーが終わった。

大成功だった。

私は秋のリサイタルに向けて毎日レッスンし

関根先生と最後の仕上げに入った。

「美莉、君の表現力は素晴らしい。今回のリサイタルは今まで以上のものになる。君が私のパートナーである限り私の踊りはパーフェクトに仕上がるよ。感謝している。」

「関根先生のパートナーとして当然の務めです。私はいつも先生の踊りを愛しています。先生が私をリードしてくださるので自分の力以上のものが見えるんです。」

「そうか、そうか、いや、君を選んで私も幸運だ。これ以上はない。」

リサイタルは大成功だった。

卓巳が最後の幕で踊る私を観に来ていたとは私は知る由もなかった。

彼は一人で客席にいた。

劇場内は暗く

トップ・アーティスト『バリアー』のリーダーが座っていたとは誰にもわからなかった。