恋するほど   熱くなる

私は荒木さんと須山さんが一緒にいるところをもう何度も見てきた。

二人は沙良さんを奪い合った仲なのに

どうして今も普通に付き合えるのかしら?

ビジネスだから?

私とは違う大人だから?

「美莉、アルバム用に十二曲全て君の詩を使うよ。」

「はい。」

「セカンド・アルバムだ。何かピッタリくるキャッチ・フレーズを考えてほしいんだが?」

須山さんは作詞以外にも私に要求してくる人だった。

「須山、おまえこれ以上美莉をこき使うなよ。」

「荒木、おまえ俺に妬いているのか?」

「そうじゃないよ。美莉は作詞家なんだ。おまえに都合のいいコピーライターじゃないんだ。」

「美莉、荒木は真面目がとりえだ。コイツのそばにいれば必ず守られる。俺が言うのも何だが、本当のことだ。」

「そんなことはおまえに言われなくても頭のいい彼女ならすでにわかっていることだ。」

「お二人とも子供なんだが大人なんだかわかりません。私はお二人に守られているってことですよね?」

荒木さんと須山さんは私にそう言われて顔を見合わせて大笑いした。

音声ルームの二人の笑い声がメンバーのいる隣のスタジオにまで響いたのか

メンバーが一斉にこちらを向いて何やらしゃべっているのを私はガラス越しに見た。

「あの須山さんを大笑いさせるなんて、美莉ちゃんて一体どういう女なんだ?」